「あん」がこのまちに残したもの
ハンセン病療養所の全生園のある東村山は、映画「あん」のロケ地です。主演の永瀬正敏さんをはじめとした出演者やスタッフの皆さんも東村山に暮らしながら撮影が行われ、スタッフルームや食事を提供するなど、撮影を全力で支えた市民の有志の方たちとの交流も育まれていきました。映画「あん」は、世界各国で大きな反響を呼び、「ロケ地を訪ねて東村山に来てくれた人をおもてなしできるような地図がほしい」と実行委員会が立ち上がりました。
河瀨直美監督、原作者のドリアン助川さん、美術の部谷京子さん、映画スタッフやキャストの皆さんが、ひとつの作品を作り上げていく真摯な姿、それを無我夢中で支えたまちの人たち。どちらも真剣に向き合って生まれた絆があったからこそ実現した冊子です。タイトルを単なる「ロケ地マップ」とせず、「メモリアルマップ」としたのはそんな理由からでした。映画の世界と、自分が暮らす馴染みのまちと、全生園の歴史、その森に暮らす人々の想い。取材を重ねるごとに現実と作品の世界が入り混じり、深く深く、沈んでいくように制作にのめり込む特別な時間を過ごしました。
映画が完成して数年が経ちますが、今も原作者のドリアンさんや映画の関係者の皆さんと、実行委員長”みっちゃん”たちとの交流は続き、映画完成後にみっちゃんが営むことになった全生園のお食事処「なごみ」にはたくさんの人が訪れています。